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腫れ止めに「シンエック」という薬を使われることがある
手術時に腫れ止め・回復を早めることを目的として「シンエック(SINECCH)」という薬が処方されたり、オプションとして付けることができる場合があります。
実質「無」?
そんな中、金沢医師による「シンエック」についてのツイートが注目を集めました。
ちょっと勇気を出して投稿します。複数の美容外科クリニックで販売されているシンエックについて。
— Kanazawa/金沢@形成外科医 (@dr_kanaz) July 31, 2022
アルニカモンタナを希釈(100倍希釈を50000回繰り返す)。実質「無」です。
想像してください。100希釈を4回しただけで1億倍希釈です。まだ49996サイクル残っています。
これがホメオパシーです。 pic.twitter.com/8QAqiJr1Hp
(上記の希釈は誤り。医師自身がリプライで訂正しています。「シンエックは「1M」のカプセルと「12C」のカプセル2種類でした。 1Mは100倍希釈を1000回、12Cは100倍希釈を12回です。」と訂正しています。)
「シンエック」とはどういう薬なのか?
「シンエック」という薬は「ホメオパシー」という補完・代替医療(CAM)の考えに基づいて作られている薬です。
ホメオパシーの特徴には以下のものがあります。
特徴
- 植物、動物組織、鉱物などを水で希釈・振とう(激しく降る)を繰り返したものを砂糖玉に浸み込ませた「レメディ」というものを薬として用いる
- 症状を引き起こすものが、その症状を癒す
(健康な時にその症状を起こさせるものを、その症状が起きているときに使うと回復する)
という考えに基づいている(同種療法)
希釈の単位
ホメオパシーでは独自の希釈単位が用いられます。(「ポテンシー」と言う)
最も一般的なポーテンシーが「C」で、「100倍に希釈して振とうする」ことを指しています。
例えば「12C」なら、「100倍希釈を12回繰り返したもの」ということです。
現代の科学とは相容れないもの
ホメオパシーの薬(レメディ)は物質を水で希釈・振とうして作ります。
希釈は100倍希釈を十数回~行います。
すると服用する薬に有効物質はほとんど含まれていない状態になります。
なので現代の科学では
ほとんどただの水 → 効果があるはずがない
と考えます。
ホメオパシーの考えとしては、振とうがポイントで物質の力が活性化するということのようです。
日本医学会では明確に否定
日本医学会では、ホメオパシーについて以下のように明確に否定しています。
こんな極端な希釈を行えば、水の中に元の物質が含まれないことは誰もが理解できることです。「ただの水」ですから「副作用がない」ことはもちろんですが、治療効果もあるはずがありません。
過去には「ホメオパシーに治療効果がある」と主張する論文が出されたことがあります。しかし、その後の検証によりこれらの論文は誤りで、その効果はプラセボ(偽薬)と同じ、すなわち心理的な効果であり、治療としての有効性がないことが科学的に証明されています1。英国下院科学技術委員会も同様に徹底した検証の結果ホメオパシーの治療効果を否定しています2。
「プラセボであっても効くのだから治療になる」とも主張されていますが、ホメオパシーに頼ることによって、確実で有効な治療を受ける機会を逸する可能性があることが大きな問題であり、時には命にかかわる事態も起こりかねません3。こうした理由で、例えプラセボとしても、医療関係者がホメオパシーを治療に使用することは認められません。
「シンエック」に効果を感じた人もいる
ツイッターで「シンエック」と検索すると「効果があった」という発言をしている人もいます。
→ ツイッター検索「シンエック」
シンエックに肯定的な発言をしている医師もいます。
逆に適応あれば検討すべきオプション
— 朝日 林太郎 (美容外科/美容後遺症 診療医 M.D., Ph.D.) (@prs_asahi) February 22, 2020
・フェイスリフト、脂肪吸引など侵襲大きめの手術後→シンエック
・傷盛り上がりやすい→リザベン
・注射系施術前の外用麻酔薬(エムラ)
繰り返しになりますが、手術手技や手術道具に多くのオプションを設定するのは不適切なので、逃げてよいと思います。 https://t.co/KRhfpLUfBv
シンエックが効果ないとか言っている人いるけど結局飲み薬は個人差があるし全員が必ず効くとは限らない。
— 黒神ヤマト (@kurokamiwx) June 20, 2021
でも本当に効果がなかったら多くのクリニックで取り扱われることはないしここまで広まることはないはず。
だから批判する人の話を鵜呑みにせず自分で調べて論文をしっかり見てから判断すべき。
また、城本クリニックのシンエックのページには「学会・文献による効果事例」として数値データが記載されています。
→ シンエック | 美容整形なら美容外科の城本クリニック
フェイスリフト(顔のたるみとり)術後
手術後の内出血や腫れの状態をシンエック投与群と非投与群に分けて比較した際、非投与群は術後1日目の内出血や腫れの状態が投与群より約25%程強く、術後1週間ではシンエック非投与群は投与群より腫れや内出血の状態が約40%程度強かった。
フェイスリフト術後
シンエック非内服群は内服群に比べて内出血斑が25%強く、回復時間も内服群に比べて50%長かった
鼻形成術後
シンエック投与群はステロイド投与群に比して遜色ない、あるいは上回る腫れや内出血の軽減効果を確認。
FDA(アメリカ食品医薬品局)は認可してる?してない?
金沢医師のツイートでは「FDAに認可されてない」とのことでしたが、様々なクリニックのHPには「認可されている」と書かれています。
どっちなんだ…
「シンエック」の製造元である「Alpine Pharmaceuticals」のHPにはこのような記載がありました。
⃰ 伝統的なホメオパシーの実践に基づいた主張であり、医学的証拠は認められていません。FDA の評価は受けていません。
Hahnemann Laboratories, Inc. は、医薬品の現在の適正製造基準 (CGMP) およびホメオパシー医薬品製品の米国ホメオパシー薬局方 (HPUS) に関する米国 FDA の規制に従って、当社のホメオパシー単一成分レメディを製造しています。
「FDAの規制に従って製造しているが、評価は受けていない」ということでしょうか。
クリニックでは大体5000円ほど~
クリニック経由でシンエックを購入する場合は5000円~ほどかかることが多いようです。(最初から付けてくれる病院もあるよう)
自分で買って安く済ませる場合は、こちらの商品で代用する人が多いようです。
→ Boiron, Single Remedies, アルニカモンタナ、 30C、 約80ペレット
(「アルニカ・モンタナ」はシンエックに配合されている成分)
賛否両論ある薬である
ということで、賛否両論ある薬であるようです。
どのような薬か理解して、自分で「買う・買わない」「飲む・飲まない」を決めるのが良いと思います。
参考サイト